土と遊ぶ。森と遊ぶ。水と遊ぶ。

それはまさに「未知(道)との遭遇」。
舗装と未舗装の継ぎ目は
「ワンダーランド」の入り口だった。


 オートバイには長く乗っていたけれど、オフロードバイクには、さほど興味はなかった。時々目にするエンデューロレースやモトクロスを凄いとは思うけれど、大事な相棒たるオートバイの扱い方とは思えなかったし、『オフ乗りは上手』的な物言いも鼻についた。ちょっとした林道など、自分のちょい古のビッグバイクでも十分に走れるし、楽しめるという自負もあった。
 ただ、この北の大地も走りたおした感を秘かに持った頃、誘われるがままに友人のオフロードバイクを借りて近場の山に入った時、自分の中で何かが変わった。本州とはロードマップの縮尺が違うほど、道が少ないと思っていたこの地は、オフロードを入れると実は多くの『道』があり、ほんの裏山にも、まだ見ぬ風景や山河があったのだ。
 普段、重いオートバイを振り回していた自分には軽量なオフロードバイクは荷物を載んだとしても、さらに向こうを見る気にさせた。そしてその先にあるライディングの奥深さも、楽しく思い知らされた。『何なんだろう、この軽さは?』。構えていたのは実は自分だったのだ。
 軽いのはオフロードバイクそのものではなく「オートバイに乗る」という行為の身近さ、気やすさのことだったんだ。オートバイをコントロールするとか、長距離を走るとか、スピードやパワーがどうとか。いつの間にか、オートバイに乗るということを特別視していたかもしれない。
 朝いつもより早く目が覚めた時、コンビニのオニギリとお茶を仕込んで、ひょいと裏山に入る。四季の移り変わりと、その香りを楽しみ、誰も来ないお気に入
りのビューポイントを見つけては贅沢な朝食タイム。時にはエスプレッソポットとバーナーをウエストバックに入れ、上出来なコーヒーに合う風景を求めて人知れぬ湖沼や滝を目指してみる。またある時には釣り道具をオートバイにくくりつけ、普段、車や徒歩では入ることすらままならない源流部や野生ポイントへ入ってみる。そこにワイルドな魚の反応があると、山奥のその川も、それを囲むすべての風景までもが宝物のように生き生きとした空間に思えてくるのだ。
 そして帰り道には、魅力的なまだ見ぬ道の入り口をいくつか見つけては、後日の愉しみとして持ち帰る。最後の仕上げにドロまみれになったオートバイを洗車機でビャッ!と洗うのは、何とも言えずに気持ち良い愉しみでもある。
 ロードマップはやがて25000分の1の地形図へと変わり、わくわくするような道や川を見つけては、オートバイに乗れる日を待ち暮らす。特別ではなく、日常の中にオートバイがあり、オートバイならではの遊びが今はさりげなくそこにあるのだ。
 北海道の林道は、そのスケールも奥深さも、そして身近さも都会に住む人には夢のような距離でそこにある。ただし、何かあった時(熊の出没も含め)、命にかかわることがあるので整備は怠り無きように!
 地面の大半は森と緑の大地、北海道。ここでオフロードバイクに乗らない手はない。今では『もっと早く乗っておけば良かったかな…でも全然遅くはなかったな…』と楽しく後悔しているのです。


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