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『ちょっと過酷な?ツーリングのススメ 』

 
 先日、久々に三国峠を越えた。峠はムセぶような霧雨。遠く広がるハズの東大雪の山々もその姿は見えないが、気配だけは強烈に感じられる。走っていればタイヤが水を切る「シャーッ」という音と森の樹々が深く呼吸する匂いに、ただただトランス状態に陥りがちになる。
 昔はこの素晴らしい山岳道路も、ひどい砂利道だった。夏の午後、無防備にロードバイクで上士幌から北上し、バックミラーがまっ白になる程の砂煙を引っ張って糠平への直線路を加速した想い出がよみがえる。身体が徐々に馴れ、速度警告灯の赤いランプが点き(昔は80km/hを超えると灯く赤いランプがオートバイには必ずついてたのです)、まるで船に乗っているかのように車体が横揺れを始める。マシンホールド、肩の力を抜き、スロットルはつまむように、開ける。戻すとどこへ行くかわからない。減速はメリハリをつけて思い切った方が車体は安定する。見よう見まねのリーンアウト、気持ちはカウンターステアで進入、バタつくリアタイヤを空転させないよう、断続的にアクセルを開けて加速する。大雪山ごしの夕陽が視界に入ったとたん、シールドの表裏にたまった砂ボコリのコーティングで目の前がまっ白になる。今と異なる曲がりくねった山岳道路、落ちたら死ぬ恐怖に逆らって、直前の視界の記憶を頼りにスロットルを開ける。幸い、当時そこを走る車はほとんどなかったしね。大雪ダム近くになって新品の黒いアスファルトが見えた時は嬉しかったね。舗装って誰が考えたんだろう。ホント偉い! と感謝したものだ。
 その時、自分は間違いなくオートバイ乗りとして一歩前に進んだと思うし、その記憶は間違いなく『楽しかった』オートバイランの想い出である。何故かオートバイ乗りを旅に誘うのはそういった過酷な想い出や雨風の匂いであり、順風満帆、天気最高な旅の想い出はあまり記憶に強く残らない。基本的に天邪鬼なのか、もしくはあまり頭が良くないのだ。それと昔のオートバイや昔の道は、オートバイ乗りを鍛えてくれる要素が多かったのだと思う。それもサーキット等のクローズドコースと違い、公道を旅するスピードの中で楽しみながら…でだ。
 ダートやウェットを走る為の大きなホイールと細いタイヤは地形にそって造られただけのワインディングをも自ら造り出したリズムで楽しく走れた。もちろん道路の整備が良くなり、舗装率も上がり、山と共にオートバイも変わってきたのだろうが、天邪鬼なオートバイ乗りとしては、あのウェットランやダートランの楽しさと、ライディングの進歩を感じづらいのはあまり良いことではない気がする。まァ、もちろんまだカタログの片スミにはそういう意味での魅力的なオートバイはあるけどね。

 雨の山岳道路、タイヤが水を吸ってグリップがあがると、それを確かめながらペースを上げていく。時にその限界を知りたくなって、リーンを深めていくとだいたい自分の限界と本当の限界が合っていることに驚く。「滑るかな??」と思ってアクセルをじわりと開けると、リアタイヤが外に出てステアリングがロックするまでカウンターが当たったりしてキモを冷やす。そうなると後はしめたモノ。限界内のライディングはやはり楽しいだけなのだ。あまり熱くなると熱気でシールドが曇るから、あくまでもクールに。時に横を向くとシールドの雨滴が真横に飛んでいって視界が回復する。わだちの水たまりを加速しながらナナメに横切るとハイドロプレーニングでタコメータが踊るのを知り、スロットルワークを覚える。
 まして雨の日はすべての匂いが強く、森の匂い、アスファルトの匂い、エンジンの匂いが記憶という旅のアルバムにより強く残るのだ。そしてそんな時、細いタイヤの重い愛機がドライ路面のまっすぐな道でいつも苦汁をナメている軽くて太いタイヤのハイパワー車を置き去りにしていることに気が付く。ドライもウェットもグラベルも、公道という同じステージ。速い、遅いはだからオートバイでは決まらない、というのは自分のこんな想い出からの結論なのです。
 勝ち負けは楽しめるか、楽しくないかだと思う。皆、楽しんで下さい。

 ぢゃ、また!

 
 

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