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『機能美考』

 
 オートバイに乗れない時期、それでもオートバイ屋はシーズンを走り切ってホッとした風情のオートバイ達に囲まれ、それを眺めている。「キレイな乗り物だなァ…」と思う自分はその時、『オートバイ乗り』の視線でないことに気が付く。子供の頃に木の切れ端を飛行機や船になぞらえ、その姿をカッコイイなどと思ったのに似た感じだろうか? 時々、想像力をそんなに働かせなくても本当に船っぽい形のカッコイイ木っ片があって、そんなモノは川に流すと本当にまっすぐ流れていき、ずっと川沿いに追いかけていったものだ(昭和30年代生まれだなァ・・・)。
  先日、フィギュアスケートを見ていた時、芸術点っていうのは順番をつけられんだろうに! と思うと同時に「キレイだなァ」と素直に思った選手はやはり上位にいたし、技術点も高かった。もちろん自分はスケートは下手くそで、コーナーで転倒してはへっぴり腰の自分を笑う小僧達を巻き添えにするのを楽しむレベルだ。
  オートバイに乗れなくなると、それ以外のモノにも興味がいく時間が増える。最近のマイブームが『リサイクルショップ』。なんだか街のあちこちで見かけるようになり、つい入ってしまう。釣り道具・スキー・ボード用品・ジャケット類・自転車用品など、ちょっと興味を持っているそれぞれのジャンルを、かと言ってオートバイ程には専門知識や先入観ナシのシロート目で見て回る。そして「おっ、カッコイイ!!」と思ったモノが安いなァとなると(一週間考えて)買ってしまう…。
  ここで気が付くのが、その「おっ、カッコイイ」と思って手に入れたモノを、後でその道のヘンタイというか達人に見せると「それはイイモノですよ」と言われる。良いモノはカッコイイのだ。いや、カッコイイものは良いのか? 
  決定的だったのは、リサイクルではなくサイクルショップでのこと。うちの『なんちゃってフェラーリ(自転車)』の為に、ヘンタイいや自転車の達人(彼の自転車は彼のオートバイよりも高価だ)が不要になったパーツを持って来てくれた。どのパーツも美しく、ついフェラーリのメカニック気分でそのパーツの組み付け始め、もともとはフェラーリのような一流でない自転車の規格にそのパーツを合わせるため、サイクルショップの門を叩いた。もともと自分としては「ただ付けばいい」という気持ちだった。目的のパーツは後輪の中心でスポークとスプロケットを保持するハブ(貰ったリアスプロケットが8段ギアだったのと、スポークがステンレスのカッコイイやつでそれを使いたかった)と、不足分の4本のスポーク(これがやっぱりなんちゃってのスポークよりカッコイイのだ)。
  ズラリと並んだ自転車のパーツ群のなんとカッコイイことか。ハブなんてただの糸まき型のパーツなのだがやっぱりその「カッコ良さ」に順番がなんとなくあって、後で値札を見ると、ほぼその順番が一致している。シート・クランク・ペダル・ステム、果てはドリンクホルダーの一つに至るまでスゴくカッコ良く、スゴく高いものもある。何故かワクワクした。
  自転車のパーツはその機能・軽さ・剛性をシンプルに、でも極限まで詰めているという点ではもともと大馬力と大重量のオートバイよりも機能に必要のない、例えばカッコ良さなどは排除されているし、そういう造りなのに、それを突き詰める程にカッコ良くなっている気がする。
  そして、その各々のパーツを解っているサイクルショップの店員というかメカニックの個人所有の自転車のカッコ良さはもうハンパではなかった。シロートの自分でもその自転車の迫力は、充分にその走りの良さをイメージできた気がする。
  美しさのための美しさと、機能美は別なんだと思う。前者は個人的にバラバラでいいと思うし、これと言った順番はつかない。けれど後者はその機能をひたすらに理解し、突き詰め、職人の技を投入し試行錯誤を繰り返す努力と執念が結果として表れる美しさ。そんな執念はきっとそのジャンルとは関係なく、「カッコイイ」と思わせるのだろう。それは物に限らず演技や動き、オートバイならライディングにも表れるのだ。上手いライダーの動きはカッコイイものだ。
  パーツを持ち帰り、うちのなんちゃってフェラーリにそれぞれのパーツを加工しながら組みつけてみた。見違える程に良くなったし、満足はしている…だが、あのサイクルショップのメカニックの自転車とは全体のバランス、執念の差も歴然であることも見える。まァもっとも、その機能である「自転車で走る」ことをしないうちはコレで良しとした。
 そしてそこに佇む我が愛機を眺める。自分で造った数々のパーツを眺める。全体のバランスを眺める。「まだまだだな…」と思う。
  頑張って働こう。そして執念の美しさが出るまで手をかけ、走り続けようと思う。
  いつか通りがかりの子供や近所のオバサンが「カッコイイね!!」と言ってくれるのを楽しみにして。

 

 

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