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『風は秋…。』

 

 ここしばらく固着して動かなくなったココロのままに、久々の愛機に火を入れて走り出した。いつの間にか密度が高くなった空気の中、トンボが放物線を描きながら向かって来る。秋の気配がその歩を速めている。素晴らしかった今年の夏の陽差しのままに、でもそこに吹く風はヒンヤリと心地良いことこのうえない。穏やかに力強い優しさをもって回る空冷2バルブ4気筒エンジンのなんと情緒豊かなことか・・・。
  気が付くと、ココロも滑らかに動きを始めている。背後に回った太陽の反射がタンクやカウルのキャンディーブルーのライン上をゆっくりと走る様が美しい。地を這うエクゾーストノートが木霊となって遠ざかる空気感がいい。
  猫足で走る愛機が絶対の安心感を伝えて来る。『大丈夫。オレは大丈夫。オマエも大丈夫だ』。流れる風の中で、自分が帰るべき居場所がまだそこにあることを認識する。「ワルいな。やっぱり気持ち良いわ・・・」。誰かが、どこかでニヤリと笑った気がする。
  スピードの中にある快楽や優越感という自分の存在をアピールする欲望を否定する気はない。スポーツとしてのライディングや、旅の道具としてのオートバイもしかり。ただ、少なくとも自分はその前提として公道を走るオートバイであるなら法定速度を気持ち良く走れなきゃいけないと思う。時速数百kmの操安を求める慎重さと同等に、だ。乗り手にしてもそう。オートバイ乗りであるならば、法定速度での走りを心穏やかに楽しみ、感じられなければいけないと思う。それが出来ないなら矢のように次々と情報や感情が飛び込んで来る速度域を楽しめるワケはない。
  Slow Dance を知った上での High Step はただの暴走とは別モノなんだ・・・。ま、個人的な考えではある。でも伝えていきたいことでもある。「オートバイは楽しいぞ! ゆっくり走ってもね!」。
  伝えきれていただろうか? 自分のライディングは、自分が手をかけたオートバイは・・・? 走り出してからまだ25年。いまだにオートバイは調子良いし、やっぱり胸を張って「オートバイは楽しいぞ!!」と言い切れる。基本的にオートバイは独りで乗る孤高の乗りモノと思っている。走りは自分自身で見つけるものだけれど、先に走り出した者として伝えたいことは伝えよう…と、ちょっと思ったハナシです。
  風は秋。北の秋はこれまた走り出したらその速いことといったらない。振り向かずに走り出すか! 今年最高の風を従えて・・・。では!

PS/多くを教えてくれ、そして感じさせてくれた先輩に捧ぐ。トモよまた逢おう。

 

 

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